いつものようにお昼に家に帰っていた。親父は例のごとく店のあがりかまちでブツブツ言っていた。お袋は自分が帰った時にはもう居なかったのか、それとも俺が戻ってきたので安心して昼の間だけ出たのか記憶は無いが居なかった。
一人となりの部屋で昼食をとり少し横になりウトウトしていた。
親父が何か騒いでいる声がした。ふと振り返ると親父がこっちに来て鬼のような形相で立っていた。
そして、「何やってるだー お前は!」と怒鳴りつけられた。驚いて起き上がり、「あー!何のことだー?」と言うと、「お前は職場の金を使い込んでるっつうじゃないか!」と捲くし立てられた。 「そんなことするわきゃないだろ!誰がそんなことを言ってるだ!」と言ったら、「みんな言ってるじゃないか!」と言ってとなりの部屋に行きまたブツブツしゃべり始めた。
しばらくフリーズ状態だった。怒りがこみ上げて来て、妄想もいい加減にしろと親父のところに行ったが何事も無かったように誰もいない相手と言いあっている様子。
・・・何も言えなかった・・・。親父の背中を見て黙って家を出てそのまま職場に戻った。
戻り路、体が蒸気し火照っていた、血圧が上がるってのはこういう感じなんだなあーと始めて自覚したのを憶えている。悶々と仕事どころじゃなかった。
ほんとにこの時の親父は鬼の様な形相だった。そんな親父の顔を見たことも想像できる顔でもなかった。怒りというものを本当に素の状態で命から沸きだしたという感じで、怖かった。
人間はこんなにも変わるものなのか・・お袋も同じ情況をあじわっているのか・・・と。
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