実家に戻ってからも父はごく普通にいつもと変わらぬ生活だった。自分でも最初はあまり変化は感じられなかったが、始終一緒にいる母は「計算するのになかなか合わないのか、ずーと同じことを何回も繰り返して時間かかってしまってイライラしていることがある」などと言っていた。
親父は大正生まれで計算はいまだにソロバンだった。それも僕等が子供の頃習った四つ玉でなく昔から愛用の下段が五つ玉の年代物だ。商人の父ちゃんを思い出させる・・・今も家にある・・・。
父ちゃんを見て来て感じたことは、人は急に認知症になるんじゃなくて、物忘れ等が自分でもはっきり自覚できて、以前の自分の持っていた能力が欠如していってることに対する苛立ち・葛藤が見えること。
本人はどれだけ気落ちし、自らの老いに不安を感じていただろう。だがバカな息子はその当時親父の気持なんか何も理解できなかった。
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